はじめに
北国最大の都札幌、直行した広い交差点、すっきりした街並み、
緑豊かな大自然に囲まれた憧れの町、札幌
6月、ほとんどの花が一斉に咲き、そして祭りがスタートする。
ポプラの梢が、眩しい夏の日差しを受けてきらきら輝く。
大通り公園の秋は、ほんのわずかな陽だまりに枯葉が舞落ちる。
一面真っ白に雪が積もり、正月が終わると雪祭りの準備が始まる。
じっとエネルギィを蓄えて、雪が消えるのをひたすら待つ。
馬糞風とはさすが今は言われないが、ともあれ乾燥した冷たい北風が吹く春。
路面電車がゆっくり走り、地下鉄の出口から通勤客が現れる。
夕暮れには大型観光バスが次々と大勢の観光客を乗せてホテルに到着する。
ライトアップされた建物が北国のブルーブラックの夜空に浮かび上がる。
自然と街、人と物、すべて色でつながる瞬間。
札幌らしい色、豊かさや幸せを感じる色で包まれる、
風土を活かし、自然環境を大切にする色を改めて考えて欲しい。
これは当時、市立高等専門学校(現札幌市立大学)デザイン学部教授であった宮内博実先生が書いた言葉です。札幌市から景観まちづくりのために大型建築物の外装の色を委託され、宮内先生を中心に札幌の風土イメージから選ばれた70色。1年を通じ、市民のみなさんの意見や札幌10区の地域ごとにおける人工物・自然物の色彩変化をそれぞれの色に気候風土を思い起こさせる札幌らしい名前をつけていますが、これは市民のみなさんの心に働きかけ、心に留めておけるように。
色から言葉へ、言葉から色へ。
こんなに一色一色大事に決められた景観のための色は日本全国でも札幌だけ。札幌の街を色から考えるきっかけになれるよう願いがこめられています。
札幌の景観色70色は、平成9年(1997年)に作成された札幌市都市景観基本計画に基づき、札幌の景観に必要な色彩の分析・検 討が進められ、平成16年(2004年)に「大規模建築物等色彩景観ガイドライン」として策定されました。平成19年(2007年)には札幌市都市景観条例が改正され、法に基づく大規模建築物等の届出・協議に移行。大きな建物や橋などをつくるときには事前に札幌市と協議を行い、札幌の景観色70色をもとに構造物の色を検討する制度が始まりました。